4442 バルテス
時価総額:92億円
業 種:情報通信
事業内容:ソフトウエアテスト事業が主力。関連の品質コンサル、人材派遣やセキュリティ・脆弱性診断も
現在の株価の位置
1月下旬の高値から3月中旬の底値まで68%の下落。
4月10日に在宅テストサービスを発表して急騰。
在宅テストサービスとは普段とは異なる在宅環境での業務により、これまでに無かったトラブルが起こる可能性があり、テレワーク開発の負担軽減するテストサービスの提供のことです。
テレワークというテーマ性で一時急騰しましたが、その後は保ちあいを形成して、5月15日の決算で上昇トレンドへ向かうのかどうかという状況です。
チャート的には下落率も高いですしまだローチートの段階なので、そこまで綺麗ではないです。
市場規模
ソフトウエア開発において、一般的には大手SIerが案件を一括受注し、ピラミッド構造の傘下の下請け開発会社に発注し、下請けが孫請けにさらに仕事を発注している状況で、その中でソフトウエアテストの業務に目を付けたのがSHIFTやバルテスのようなテスト専門会社になります。
2017年度の調査によると、ソフトウエア開発の市場規模は約15.5兆円あり、そのうちテスト工程の部分を切り出すと5.5兆円程度です。
ソフトウエアテスト市場の約2%をテスト専門会社が受注している状況で、それ以外の98%は開発エンジニアがテスト工程まで行う構造となっています。
市場成長率
ソフトウエア市場全体で毎年10%以上の成長が見込まれているため、それに合わせてソフトウエアテスト市場も毎年10%成長が期待できます。
また、IT人材の不足により、開発エンジニアがテスト工程を行わないで専門会社に任せるケースも増えてくると思われるので、実際はもっと大きい成長率になり得るのではと考えています。
なぜテスト工程は専門会社にお願いするのでしょうか?
ソフトウエア開発の現場では、エンジニアは開発には意欲的ですが、ソフトの品質管理のためのテストへのモチベーションが低くなり信頼性に欠けるため、第三者に依頼する方が品質の向上が認められてきました。
田中社長も前職はソフトウエア開発の社長であり、その後ソフトウエアテスト会社を立ち上げた経緯を考えても、開発エンジニアがテストを行うことは結構難しいようです。
またコスト面においても専門会社に任せた方が良い点もあります。
リスク要因
エンジニア不足を背景とした外注比率(派遣エンジニア)の上昇によるコスト増加
田中社長も伸びるイメージは出来ているが、人材不足が課題だと話しています。
労働集約型モデルなため、人材不足はそのまま売上に直結します。
実際に2020年度は人が足らないために外注比率が上昇して、粗利率が低下しました。
ただしこれは完全にネガティブな印象はなく、売上高の急速な拡大による技術者不足が起きたということは、ソフトウエアテストの需要が非常に高まっていることだと思います。
ソフトウエアテスト市場における競合他社の存在
競合の筆頭はSHIFT。
SHIFTは積極的なM&Aによる市場攻略や、テストの上流工程へも参画して単価上昇の目論み、明確な人事戦略等で、急速に業績を伸ばしてきています。
営業利益倍率を考える
3697 SHIFT
時価総額:1,456億円
営業利益:24億円
営業利益倍率:60倍
4442 バルテス
時価総額:92億円
営業利益:3.2億円
営業利益倍率:28倍
業績の成長性はSHIFTに軍配が上がりますが、ここ2年だけを見るとバルテスも引けを取ってはいません。
ただし、営業利益率では明確な差があります。
M&Aで人材確保するSHIFTと、足りない人材を外注するバルテスでは、同じような労働集約型の企業でも利益率に結構な違いがでるのでしょうか。
まとめ
SHIFTという巨大な競合はいますが、市場環境が良好で伸びしろも十分あるソフトウエアテスト市場では、パイの取り合いにはなりにくいと自分は考えます。
バルテスは2018年度に実施した「採用と人材育成を中心とした構造改革」の効果を発揮して、2019年以降に大幅に人員確保できており、それがそのまま収益につながっています。
それにより今後の成長性も期待できるバルテスについては、SHIFTと同じとは言わないまでも営業利益倍率がもう少し高く評価されても良いのではないかと思います。
市場成長率をそのまま営業利益に当てはめると(ここ数年の業績を考えるとかなり保守的)
3.2億円×1.1×1.1×1.1=4.3億円
4.3億円×28倍=120億円(上昇余地30%)
4.3億円×35倍=150億円(上昇余地63%)
4.3億円×40倍=172億円(上昇余地87%)
かなり乱暴な考えですが、結局は「ソフトウエアテスト市場の環境も良いし営業利益倍率で見たら割安そうだから、もう少しバルテスの評価が高まってもいいのでは」と思いました。